製造・流通業では、現場で生成されるデータ量が膨大です。生産実績、在庫状況、売上、原価、相場に至るまで多様なデータが毎日蓄積されます。
しかし、それを経営判断につなげる環境を整えている企業はまだ多くありません。豚肉市場では、この課題がより顕著です。供給量や輸入肉の動向、季節需要、祝日パターンなどさまざまな変数が日々の価格と販売戦略に影響します。経営陣や営業、製造、会計部門すべてで迅速なデータに基づく判断が求められますが、実際にそのデータを即時確認できる環境を持たないケースが多くあります。
30年以上「ドドラムハンドン」ブランドで国内の豚肉市場をリードしてきたドドラムフードは、生産、在庫、売上、品質など膨大な現場データを保有しています。しかし、データ収集の環境は整っていたものの、それを経営判断に即時活用できる環境は整備されていませんでした。
ドドラムハンドンがビッグデータプラットフォームを構築し、データドリブン経営環境への転換を推進したプロセスを紹介します。
主な成果
- 経営指標(KPI)のモニタリング環境を構築
経営陣・営業・生産・会計の全部署で実運用 - 20件以上の報告書を自動化
業務効率と意思決定のスピードを改 - 枝肉相場予測モデルを導入
既存の誤差率:11.95% → HEARTCOUNT自社モデル:1.46%(2025年10月基準) - プロジェクト終了後もITチームが直接ダッシュボードを追加・運用

導入背景 | 断片化したデータ環境と手作業レポートの限界
収集はされていたが活用に至っていなかった環境
ドドラムハンドンでもデータ収集自体は既に行われていました。自社で構築した内部プラットフォームを通じて売上や在庫関連のデータを確認していました。しかし、プラットフォームから提供されるのは表形式のExcelファイルに限られており、現場はこれを自ら加工してレポートを作成する方法で業務を処理していました。
代表的な事例が営業日報の作成プロセスです。データの出所が多岐にわたり、複数のExcelファイルや数十のタブを分け、フィルタの組み合わせを変えながら資料を抽出し、PDFに変換して共有する作業が毎日繰り返されていました。サーバーから直接抽出するか担当者に別途依頼しなければならないデータも存在しました。
データは存在していたものの、それを1枚のレポートにまとめるまでに投入される時間と手作業が多かったのです。
手作業レポートに依存せず、必要な指標を即時に確認できる環境、そして部門間で同一のデータ基準に基づき迅速に判断を下せる構造が必要でした。
ソリューション選定 | 検討から導入まで段階的に適合性を検証
この課題を解決するため、データ活用環境の改善を検討する過程でHEARTCOUNTを見つけ、検討を開始しました。社内の事情ですぐに導入できる状況ではありませんでしたが、デモミーティングやオフラインイベント参加、ソリューションのデモンストレーションを通じて段階的に検討を続けました。
その後、ドドラムハンドンが保有するデータでPOC(概念検証)を実施し、HEARTCOUNTとの分析フィットが高いことが確認され、導入のタイミングが合致しました。ソリューション選定の基準は3点でした。
- 現場がITチームの支援なしに直接分析できること
- ドドラムハンドンのデータ構造と分析方法に適合すること
- 技術的信頼性に基づき安定した運用構造を実現できること
ドドラムハンドン IT部門 Y部長
"経営意思決定の正確性向上や業務生産性の向上など、全社的なデータドリブン経営力が大きく強化されると期待しています。HEARTCOUNTはプロジェクト全体にわたり積極的な協力と支援を惜しまない、素晴らしいビジネスパートナーだと考えています。"
構築プロセス | 業種特性を反映した段階的な環境設計
プロジェクトは営業・生産・会計・ITで構成されたTFとともに、要求定義、ダッシュボード構築、中間報告、補完作業、最終報告の順で進行しました。
畜産・流通業のデータ構造の把握
プロジェクト初期において最も重要な第一歩は、ドドラム固有のデータ処理ルールを正確に理解することでした。と畜日を基準にフィルタがかかるデータ、特定の曜日単位で周期を持つデータ、組織内部の報告並び替え基準などが代表例です。
これらのルールは外部から事前に把握しにくい領域です。画面設計後も実データを扱う中で新たな要求が追加で発見され、現場との緊密なコミュニケーションを通じて要件を具体化していきました。このプロセスが現場が実際に信頼して使える成果物の基盤になりました。
部門別の業務フローに合わせた画面設計
各部門が既存の業務フローを維持しつつすぐに活用できる構造を設計原則としました。
営業チームはダッシュボード上で必要な画面を画像として抽出し、既存の報告書フォーマットにそのまま利用できるよう設計しました。データ収集と加工にかかる時間を削減しつつ、既存の報告体制は維持する方式です。毎日繰り返されていたExcel抽出・加工・PDF変換の工程が、ダッシュボード画面の保存という一段階に圧縮されました。
会計チームは既存の計算方法と数式をそのまま実装するためにかなりの時間を投入しました。この作業が会計チームの実使用基盤になりました。生産チームは現場状況を常時確認できる専用画面を別途構成して運用しています。経営陣のダッシュボードは毎日確認が必要なKPI中心に構成され、現状の電光掲示板のように活用されています。
使うほどに広がる活用範囲
プロジェクトの進行過程で現場の活用ニーズが拡大しました。完成したダッシュボードを直接確認したことで、より多様なデータ活用の可能性に気づいたためです。HEARTCOUNTはこれに応じてチーム別のBI活用およびAI分析機能の教育を複数回実施し、顧客が自らデータセットを構成して新しいダッシュボードを作成できるレベルまで活用力を高めました。プロジェクト終了後もITチームが自社でダッシュボードを追加・保守し、現行化を続けています。
予測モデル | 枝肉相場予測モデル導入と意思決定の高度化
経験と勘に依存していた相場予測の限界
枝肉相場は原料肉の購入と販売価格決定に直接影響する変数です。在庫状況を見て価格調整を判断すること、原料肉の購入・販売のタイミングを決めることのすべてが相場予測と結びつきます。
従来は担当者の経験に依存した予測が主で、どの要素を見て予測するかの基準も担当者ごとに異なっていました。外部の有料予測サービスも利用しましたが、実際の相場との差が大きいという限界がありました。豚肉市場の枝肉相場は供給量、在庫、輸入肉動向、季節性など多様な要因が複合的に反映されて変動するため、予測が容易でない特性があります。
時系列パターン重視のモデル選定プロセス
HEARTCOUNTはさまざまな予測モデルを検討しました。為替や牛・鶏・輸入肉価格など外部データを追加して性能をテストしましたが、有意な改善は確認されませんでした。したがって枝肉相場データ自体に内在する時系列パターンを最大限活用する方向を採り、最終的にProphetとXGBoostを組み合わせたモデルを選択しました。

枝肉相場は市場のさまざまな外部要因が既に反映された結果データであり、季節性が明確に現れる特性を持っています。したがってこれらの時系列的特性を中心に予測を行い、既存のパターンから大きく逸脱する急激な市場変動が発生した場合にはそれを反映できるよう補正値を適用して予測精度を高めました。予測モデルの技術的アプローチはProphet+XGBoostによる時系列予測モデル で詳しく確認できます。
既存予測サービスの誤差率 11.95%、HEARTCOUNT 自社モデルの誤差率 1.46%(2025年10月基準)。 現在、この予測値は価格会議における原料肉の購入・販売タイミング決定の根拠として活用されています。
導入成果 | 全社での実使用と自律運用環境の構築
ドドラムハンドンのHEARTCOUNT導入成果は、部門ごとに異なる形で現れました。
経営陣はKPIダッシュボードを常時モニタリングする環境で運用しています。必要な指標を即時に確認できる構造が整いました。
営業・生産部門は毎日繰り返されていた手作業のレポート作成から解放されました。20件以上のレポートが自動化され、レポート作成に投入されていた時間を実務に活用できるようになりました。会計チームはプロジェクト終了時点で正確な要件が実装されたという高評価のフィードバックをいただきました。
ITチームはプロジェクト終了後もダッシュボードを自社で追加しています。外部で構築された環境を引き継ぐレベルを超え、内部で直接運用・発展させる構造になりました。
ソリューションが組織内に実質的に根付いたことの最も直接的な証です。結果として導入初期の課題が解消され現場に定着し、現在はデータ分析環境の高度化に向けた協議が続いています。単なるソリューション導入を超え、ドドラムハンドンのビジネス成長と共に分析環境を発展させていくパートナー関係へとつながっています。
同じような課題を抱えているなら
- データはあるが意思決定につながらない
- レポートは毎日作るが経営陣は依然として数字を待っている
- 部門ごとに基準が異なり整合性の確保が難しい
このような課題は製造・流通企業で共通して見られます。初めから明確な答えが描けなくても、問題を定義し環境を検討する過程で一つずつ解決していけます。似たような悩みをお持ちなら、まずはどのような方法が組織に合うかをお話ししてみてください。
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