全て同じダッシュボードではないの? (BIツール vs PAツール)

全て同じダッシュボードではないの? (BIツール vs PAツール)

BI (Business Intelligence) ツールとPA (Product Analytics) ツールの違いを比較し、代表的なプロダクト分析(PA)ツールである Amplitude(アンプリチュード)、Mixpanel (ミックスパネル)、GA4の特徴をまとめました。

このページでは、

こんにちは! HEARTCOUNTのAnalytics Engineer、Jadenです。

今日は PAツールBIツールについてお話したいと思います。

以前は、BI (Business Intelligence)ツールがダッシュボード機能を独占していましたが、最近ではPA (Product Analytics)ツールもダッシュボード機能を提供し、領域を拡張しています。

ユーザーの行動データをリアルタイムでモニタリングするために、PAツールのダッシュボードが活発に使われています。

しかし、2つのツールのダッシュボードでは目的やアプローチが異なります

PAツールのダッシュボードが製品使用パターンに集中しているのに対し、BIツールのダッシュボードはビジネスインサイトの導出に焦点を当てています。

Business IntelligenceツールとProduct Analyticsツール

PA (Product Analytics)ツールとは?

PAツールは、Web/アプリ製品のユーザーエクスペリエンスを最適化し、製品の成長を促進するために使用される分析ソリューションです。

ユーザーの行動データを収集、分析して、製品改善に必要なインサイトを引き出すことが主な目的です。

PAツールは、Web/アプリに挿入されたトラッキングコードを介してユーザーの行動データを自動的に収集します。ページビュー、クリック、スクロールなど、ユーザーのすべてのイベントをリアルタイムでキャプチャし、これを分析しやすい形に加工します。

収集されたデータは、PAツールの分析エンジンによって様々な角度から分析されます。コホート分析、ファネル分析、リテンション分析など、ユーザー行動分析に特化した手法が活用されます。

これにより、ユーザーが製品をどのように使用するのか、どの機能で離脱が発生するのか、ユーザーセグメント別の行動パターンはどのようなものなのか、などについて深く把握することができます。

データドリブンな意思決定のための重要なツール

PAツールが提供するユーザー行動データと分析結果は、製品開発と運用において、データドリブンな意思決定を可能にします。

プロダクトマネージャー、企画者、アナリストなどは、PAツールのインサイトに基づいてユーザーエクスペリエンスを改善し、製品の成長を牽引することができます。

例えば、Eコマースサービスであれば、次のようなインサイトを導き出すことができます。

  1. ユーザーが最も多くクリックする商品カテゴリと商品は何か?
  2. 商品詳細ページで購入につながるコンバージョン率はどのくらいか?
  3. 購入を躊躇して離脱するページはどこなのか?
  4. 再購入率が高いユーザーセグメントの特徴は何か?

つまり、PAツールはPLG (Product-Led Growth)戦略をサポートするためのコア・ソリューションです。

PLGとは、製品そのものが成長の原動力となる戦略で、製品の使用量とユーザー満足度を高めることで、バイラル拡散、アップセル/クロスセルなど、製品主導の成長を実現することが目標です。

そのためには、ユーザーの行動を深く理解し、データに基づいた迅速な製品改善が不可欠です。

製品に基づいて成長するためには、当然、製品に対する分析、Product Analyticsが上手に行われなければなりません

PAツールの特徴

リアルタイムイベントロギング

PAツールはWebサイトやモバイルアプリに組み込まれているSDKやAPIを介して、ユーザーイベントデータをリアルタイムで収集します。

一言で言えば、Webログを収集するということです。

ユーザーがページを閲覧したり、ボタンをクリックするなどのアクションが発生するたびに、そのイベントはPAツールに送信され、ログに記録されます。

例えば、Eコマースアプリであれば、「商品の照会」、「カート投入」、「決済完了」など、ユーザーアクションの全てのプロセスがイベントとして記録されます。

さらに、ユーザーID、デバイス情報、タイムスタンプなど、様々なメタデータも一緒に収集されます。

このようなリアルタイムの詳細なデータ収集能力は、PAツールが製品改善とユーザーエクスペリエンスの最適化のための重要なツールとして定着した主な要因の一つです。

データ保存機能 O (別途DW/DM構築 X)

PAツールの大きな利点の一つは、独自のデータストレージを提供することです。

BI

BI (Business Intelligence)では、データ分析のために様々なステップを経なければなりません。

データを収集し、それを別のデータウェアハウス(DWH)に移動し、そこから再び分析ツールにインポートして処理するような方式でした。

このプロセスをETL (Extract / Transform / Load)と呼びます。

PA

しかし、AmplitudeやMixpanelのようなPAツールは、これらすべてのプロセスを一つのシステム内で解決します。

データを収集すると、すぐに独自のストレージに保存し、その場ですぐに分析できるようになるのです。

これにより、まずプロセスが簡素化されます。別のETLプロセスが不要なので、データ処理時間が短縮され、リアルタイムまたは準リアルタイムの分析が可能になります。

使いやすさの面でもメリットがあります。技術的な専門知識の少ないユーザーでも簡単にデータを分析することができ、データ収集から分析まで一貫したインターフェースを提供します。

データの一貫性の維持も容易になります。データが複数のシステムを経由しないため、データの一貫性の維持が容易で、データのバージョン管理や同期の問題が軽減されます。

PAツールはリアルタイムのデータ分析が可能

前述したように、PA (Product Analytics)ツールの最大の利点の一つは、リアルタイムデータストリーミング機能です。

BIダッシュボードは一般的にデータウェアハウス(DWH)やデータマート(DM)を経てデータが処理された後に更新されます。

このようなプロセスのため、BIダッシュボードのデータは早くても数時間単位で更新され、多くの場合、日単位や週単位で更新されます。

一方、PAツールのダッシュボードは、このような中間プロセス無しにデータを直接収集して処理します

PAツールのリアルタイムデータストリーミングの主なメリットには、即時のインサイト取得、迅速な対応、リアルタイムのパーソナライズ、A/Bテストの最適化などがあります。

例えば、Eコマースプラットフォームで特定の商品の販売が急増したことをリアルタイムで把握し、即座に在庫管理やマーケティング戦略を調整することができます。

3つのPAツール: Mixpanel、Amplitude、GA4

Amplitude: カスタマイズに有利であるものの、高コスト

Amplitudeの最大の強みは、広範かつ深い分析機能です。ユーザーコホート分析、ファネル分析、リテンション分析などProduct Analysisに必要なほぼすべての機能を提供します。

さらに、Amplitudeは顧客LTV(生涯価値: Life Time Value)予測、ペルソナ分析、A/Bテストなどマーケティング/CRM領域まで分析スペクトルを拡張しています。Product Analysisを超えて、ビジネス全般のデータドリブンな意思決定をサポートするのです。

Amplitudeは、ダッシュボードを自由に構成してカスタマイズできるという大きなメリットがあります。各製品の特性とチームのニーズに合わせて最適な指標やグラフを配置することができます。例えば、マーケティングチームはユーザー流入に関する指標を、開発チームはパフォーマンスに関する指標を一目で確認できるダッシュボードを作成することができます。

このような柔軟な構成のおかげで、データを見る人の立場から見ると非常に便利です。必要な情報を簡単に見つけて分析することができます。

しかし、このような長所が逆に短所となることもあります。Amplitudeの多様で膨大な機能をすべて習得し、実際に活用するには、かなりの時間が必要です。初めて使用する人には、難しさが感じられる部分です。

また、コストが高いため、小さな規模の会社は Amplitudeの使用を躊躇する可能性があります。

Amplitude Pricing Options | Fast, Intelligent Customer Behavior Insights with Affordable Pricing Plans
Grow customer retention and build better products with Amplitude’s product analytics platform by selecting the plan that’s right for you.

Amplitudeは強力な機能と柔軟性を提供しますが、それだけ学習に時間がかかり、コストも高いという特徴があります。会社の規模とニーズに応じて、これらの長所と短所を慎重に検討する必要があります。

Mixpanel: 直感的で実用的

Mixpanelは、Product Analysisに必要な機能を搭載し、Amplitudeよりも価格的に実用的なPAツールとして評価されています。AmplitudeがTableauのようだとしたら、MixpanelはPower BIにたとえればいいと思います。

Mixpanelはドロップダウン・メニューを使ってイベントとプロパティを簡単に指定し、クリック数回でファネルチャートやコホートチャートを作成することができます。開発者ではないビジネスユーザーもすぐに適応できるインターフェースで、導入障壁は低いです。

Mixpanelの価格はAmplitudeと比較すると手ごろな価格で、中小規模の組織にも適しています。無料プランのイベント制限も月に1,000万件と寛大です。

ただし、組織やデータが大きくなるにつれて機能的な制限に直面する可能性がある点には考慮が必要です。

Google Analytics 4: 無料

Google Analytics 4 (GA4)は、大手企業も使用している無料のWeb/アプリログ分析ツールです。

過去のバージョンである Universal Analytics (UA)がWebログ分析にとどまっていたのに対し、GA4はモバイルアプリの分析までサポートします。2019年、2020年頃には、Eコマースの自社モールを運営する場合、FacebookマーケティングとGAのWebログ分析は必須と考えられていました。

GA4の機能的な強みは、Googleの様々なサービス(Google Ads、Google Marketing Platformなど)とのネイティブ統合です。Web/アプリのユーザーログを広告チャネル、キャンペーンなどのマーケティング実行データと簡単に連携することができます。これにより、Acquisition (アクイジション)から Retention (リテンション)までのユーザージャーニー全般を分析することができます。

また、GA4はGoogle CloudのBigQueryとも簡単に連携します。大容量のログデータを簡単にエクスポートして、SQLベースのカスタム分析を行うことができます。データサイエンスの観点からみると魅力的な部分です。

ただし、GA4のUI/UXは改善の余地が多そうです。メニュー構造が直感的ではなく、設定がやや複雑なので、ツールの使い方を習得するには時間がかかる場合があります。

また、GA4は、AmplitudeやMixpanelに比べて不足している部分もあります。チャートのカスタマイズオプションが限られており、ユーザーパス分析など行動分析の機能はやや残念です。

GA4は軽いレベルの製品分析を必要とする組織、あるいはカスタマイズされたダッシュボードが無くても基本的なユーザー統計だけで十分な組織に適していると思います。

PAツール市場の代表ランナーである Amplitude、Mixpanel、Google Analytics 4 (GA4)の特徴と長所と短所を比較・整理すると以下の通りです。

特徴AmplitudeMixpanelGA4
分析機能★★★★★★★★★★★★
ダッシュボードの柔軟性★★★★★★★★★★
リアルタイムデータ処理★★★★★★★★★★
学習曲線★★★★★★★★★
価格★★★★★★★★★★

(★の数が多いほど、その特性が優れていることを意味します)

  • Amplitudeは最高の分析機能と柔軟性を誇りますが、価格が高く、学習曲線が急になります。
  • Mixpanelは本質的な分析機能に直感的なUXを備えており、中小規模の組織に適しています。
  • GA4は無料で使用可能という利点がありますが、分析機能と拡張性の面ではやや残念です。

BIツールはPAツールとどう違うのですか?

BI (Business Intelligence)ツールは、企業内のデータを総合的に分析・視覚化し、データドリブンな意思決定を支援するソリューションです。

営業、マーケティング、財務、生産などビジネス全領域に渡るデータを統合管理し、これを多角的に分析してインサイトを引き出すことが主な目的です。

データ統合とデータウェアハウス

BIツールは、企業内の様々なソースシステムからデータを収集、統合することから始まります。ERP、CRM、マーケティングオートメーションツールなど、各システムに散在するデータを抽出し、データウェアハウス(DWH)やデータマート(DM)に集約するプロセスが必要です。

こうして構築されたデータウェアハウスは、BIツールのコア・インフラとして機能します。データウェアハウスは、各ソースシステムのデータをトピック領域ごとに統合し、分析に最適化された形で正規化します。これにより、ユーザーは一貫性のある洗練されたデータにアクセスできるようになります。

PAツールとの違い

では、BIツールは、先ほどのPAツールとどのような違いがあるのでしょうか。

まず、分析対象データの範囲が異なります。

PAツールが主にユーザーの行動データに焦点を当てているのに対し、BIツールは企業内のすべてのデータを網羅する包括的な分析を行います。

また、一般的にBIツールはリアルタイムのストリーミングを行いません

PAツールがリアルタイムでデータを収集する一方、BIツールはデータウェアハウスにロードされたデータをバッチ処理(Batch Processing)する方式で動作します。

したがって、BIはリアルタイム性よりもデータの整合性と安定性に重点を置きます。

PA + BI: 一緒に使用するとより良い

PAデータをAPIで抽出して、BIシステムのデータウェアハウス(DWH) / データマート(DM)に統合する方式は、両方のツールの利点を組み合わせた強力な分析環境を提供します。

これを理解するためには、まずPAとBIの使用目的の違いを認識することが重要です。

先に説明したように、PAは主に製品またはサービスのユーザー行動を細かく追跡・分析することに重点を置いており、リアルタイムデータに基づいてユーザーエクスペリエンスを改善し、製品機能を最適化することが主な目的です。

一方、BIはビジネス全体のパフォーマンスを分析し、戦略的な意思決定を支援することに焦点を当てています。

財務、マーケティング、オペレーションなど様々なビジネス領域のデータを総合的に分析し、全体像を提示するのがBIの主な役割です。

この2つのツールを統合することで得られるメリットはかなり大きいです。

PAの詳細なユーザー行動データをBIの広範なビジネスデータと組み合わせることで、ユーザー行動が全体的なビジネスパフォーマンスに与える影響をより深く理解することができます。

例えば、特定の製品機能の使用パターンが顧客維持率や売上にどのような影響を与えるかを分析することができます。

また、BIツールの高度な分析機能をPAデータに適用できるようになります。予測分析、シナリオ分析、データマイニングなどの手法により、より複雑で深いインサイトを引き出すことができます。

これは、長期的な製品戦略の策定に大いに役立つ可能性があります。

データガバナンス面でもメリットがあります。一元化されたDWH/DMにより、データ品質管理、セキュリティ、コンプライアンスがより効果的に実施できます。これは、データドリブンな意思決定の信頼性を高めるための重要な要素です。

結論として、PAとBIを統合することで、各ツールの強みを活かしながら、より包括的で実用的なインサイトを獲得することができます。

これにより、企業は、製品レベルの細かい最適化から全体的なビジネス戦略の策定まで、さまざまなレベルでデータドリブンな意思決定をより効果的に行うことができます。

最終的に、このような統合アプローチは、製品の競争力強化とビジネスパフォーマンスの向上に大きく貢献します。

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