NPS (Net Promoter Score: 顧客推奨度)
そのサービスが市場に定着して今後成長できるかどうかを判断することのできる指標がNPSと呼ばれる顧客推奨度です。
これを測定するためには「他の人にサービスや製品を推薦する意思がありますか?」という質問に対して回答を0~10点まで選択するようにします。そして、0~6点は detractor (批判者)、7~8点は passive (中立者)、9~10点は promoter (推奨者)に分類します。
意外とマーケティング担当者や製品担当者の中でNPS指標を知らない人が案外多いです。知らなくともサービスだけ上手く成長すればいいのではと言われれば、何も言うことはありませんが、製品を成長させる上で広く使われる指標なので、知っておいて損はないです。NPSの計算式は以下の通りです。
[全ユーザーの中で製品を推奨する人の割合(%)] - [全ユーザーの中で製品を推奨しない(批判する)人の割合(%)]
当然、NPSスコアが高ければ高いほど良いシグナルとなります。NPSが30%より高ければ、そのサービスは良い評価を受けていると解釈すると言われています。テスラは90点を超えるNPSスコアを受けたと言われています。
複雑なアンケートを設計して曖昧な結果を導くよりも、NPSのスコアを明確に測定する方が良いかもしれません。NPSのアンケートで注意すべき点は、製品を推奨する理由と推奨しない理由を必ず一緒に聞かなければならないことです。そのようにせずスコアのみを知ったとしても、何を改善すべきかを明確に把握できない可能性が高くなります。推奨しない理由を一つずつ改善すれば、最終的にはNPSのスコアは上がりますが、それは言うほど簡単ではありません。そのため、製品とユーザーデータにこだわることがグロースにおいては何よりも重要です。
k-factor (バイラル係数)
これはそのサービスはどれだけバイラルが上手くいっているかを表す指標です。「バイラル係数」と呼ばれることもあります。コロナ禍で外部行動が困難な時期にクラブハウス(Clubhouse)というアプリサービスが流行しました。私の周りの人に聞いてみると、使用頻度はかなり減ったようですが、クラブハウスを使うためにSIMフリー端末のiPhoneを購入する人もいるほどでした。
クラブハウスを使うためには招待状というものが必要です。招待状はクラブハウスアプリを使う人に発行されるのですが、他の人がクラブハウスアプリを使うためには招待状が必要です。招待状が中古で売りに出されている場合もありましたが、クラブハウスの製品担当者は広報費用をあまりかけずに、人々が自発的に広報してくれるので、これほど良い状況はありません。そのため、製品設計の際、このようなバイラル要素をうまく取り入れれば、マーケティングや広報の費用を大幅に節約することができます。k-factorの計算式は以下の通りです。
[ユーザーあたりの招待した人数] × [招待を通じて加入(コンバージョン)した割合]
簡単に言うと、私が現在クラブハウスの招待状を10枚持っていて、これを10人の友達に送り、そのうち2人が入会した場合、k-factorは2になります。k-factorの指標が1以上に維持される場合にはそのサービスは成長することになり、逆に1より低い場合にはそのサービスは停滞するとみなすことができます。単純に考えれば、それぞれのユーザーの招待を多くして、コンバージョンする確率を高めるようにバイラル戦略を立てればよいということになります。
Tossが爆発的に成長することができた理由は、既存のレガシーサービスとは異なる便利なUXとサービスを人々が知って、勝手に推奨するバイラル要素が優れていたためです。例えば「送金支援金」というイベントがありましたが、これは私がTossを使用していない知人に送金をして、その人がお金を受け取れば、私に宣伝の対価を与えるイベントでした。
もちろん、その金額は大きくはありませんでしたが、人々はただでお金をもらえるという考えで自発的な宣伝をものすごく行い、このために結果的にはTossのアクティブユーザーが多く増えたと考えられます。もちろん、このようなイベントのためにプッシュ疲労度が増大してTossを退会したという人もいますが、全ての人を満足させる機能はこの世にないと個人的には思います。
北極星指標 (North Star Metric)
北極星指標の別の意味はコア指標またはアハ・モーメント(aha moment)です。サービスが上場するために無条件に集中して改善すべき指標を意味します。Eコマースを例に挙げてみます。Eコマースでは売上は北極星指標ではありません。売上は結果です。売上や購入件数の目標を達成するために、商品を購入する人たちがどのようなパターンを示すかを探して、それを指標化したものを北極星指標とみることができます。
例えば、Facebookは登録後1週間以内に7人の友達を追加したかどうかをコア指標として見ていると言われています。Slackは登録後、2000件のチャットメッセージを送信したかどうかをコア指標としていると言われています。つまり、そのようなパターンを持つユーザーが多くなければサービスを成長させることができないということです。
しかし、彼らがそのようにしたから私たちのサービスも同様にすればよいと考えてはいけません。それぞれのサービスを利用するパターンは異なり、参考にはなりますが、そのまま適用されるケースは恐らくないと思います。
北極星指標を見つけることは簡単なことではありません。あるサービスでは北極星指標を見つけるのに6年かかったと聞いたことがあります。北極星指標が見つからず、サービス自体が消滅したケースも多々あります。データ分析をすれば見つけられる確率は高まると思いますが、すでに購入したりサービスを利用した顧客の率直な意見をよく整理して、実験を通じて絶えず発見しようとする努力が必要だと思います。
ここまでサービスの成長に関連する3つの指標について見てきました。上記の指標を測定するためにデータを収集・整理してダッシュボード化する一連のプロセスは、全てのグロースマーケティング担当者が行うことではないと思います。
ただ、このような指標を測定すればサービスを成長させることができるという事実を知るのと知らないのは大きな違いです。人々に愛されるサービスのグロースマーケティング担当者は、ほとんどの場合、顧客の意見を聞くことができ、またデータを見ることもできます。普通のマーケティング担当者になりたいのであれば、このような指標を知らなくてもいいと思います。
ただし、より体系的にサービスを管理したいのであれば、前述の3つの指標は必ず覚えて正確に理解することをお勧めします。