1.ダッシュボードやBIツールの導入を検討している方、興味がある方
2.Tableau、Looker Studio、Power BI、Spotfire、HEARTCOUNTの長所と短所を1つのサイトで比較したい方
3.代表的なBIツールの特徴を知り、実務での活用方法を想像してみたい方
こんにちは!HEARTCOUNTチームのAnalytics Engineer、Jadenです。
現代のビジネス環境において、データの重要性はこれ以上強調する必要がないほど自明です。
企業は単にデータを保有するだけではありません。
組織のすべてのメンバーがデータに関心を持ち、主要な業績評価指標(KPI)を理解し、それに基づいて意思決定を行う文化を作る必要があります。
そして、これを実行するためのツールがダッシュボード、その中でもBIダッシュボードです。前回はBIツールとPAツールを比較してみました。 (下記リンク参照)
今回の記事では、市場で注目されているBIツール5つを選定し、それぞれの長所と短所を見てみたいと思います。
Tableau: BI市場の iPhone Pro
TableauはBI市場のiPhoneのような存在です。
ブランド価値が高く、機能も強力です。 そして最も高価です。
大企業、金融機関、公企業など大きな組織で使われています。
では、まず、その長所を見てみましょう。
長所1. 強力な(自由度の高い)データ視覚化機能
Tableauの強みは、その無限の視覚化の自由度にあります。このツールは、ユーザーの創造性にほとんど制限を加えず、基本的なグラフから全く新しい形式の視覚化まで、あらゆることが可能です。
ダッシュボードをWebページのように高度にカスタマイズして開発したいニーズがある企業にとって、Tableauは最適な選択肢です。企業のブランドアイデンティティを完全に反映したり、複雑なビジネスプロセスをそのまま視覚化することができるためです。
Tableauは、クリエイティブな視覚化手法でインサイトを導き出そうとするデータチームにとって欠かせないツールです。従来のグラフのタイプに拘束されることなく、データを自由に探索して表現することができるため、隠れたパターンを発見し、新たなインサイトを得るのに大いに役立ちます。
長所2. Salesforceとの強力なシナジー
Salesforce (セールスフォース)は、全世界で最も大きなシェアを誇る顧客関係管理(CRM)プラットフォームです。同社は、クラウドベースのCRMソリューションを提供し、企業が顧客データを効果的に管理・活用できるように支援しています。
特に注目すべき点は、Salesforceのマーケティング自動化機能です。この機能により、企業は顧客との様々な接点で自動化されたマーケティング活動を行うことができます。
例えば、顧客の行動や特性に応じてカスタマイズされたメールを自動的に送信したり、ソーシャルメディアキャンペーンを効率的に管理することができます。このようなマーケティングの自動化は、特に大規模な顧客データを扱う大企業にとって魅力的な機能です。
SalesforceがTableauを買収して以来、両プラットフォームのシナジー効果はさらに顕著になっています。
Tableauは、Salesforceの膨大なCRMデータをより直感的で意味のある形に変換します。これにより、企業は顧客データからより深いインサイトを得ることができます。
例えば、マーケティングチームは、Salesforceで収集された顧客データとキャンペーンのパフォーマンスデータをTableauで視覚化することで、どのマーケティング戦略が最も効果的なのか、どの顧客セグメントに焦点を当てるべきかをより明確に把握できるようになりました。
このようなデータドリブン型の意思決定は、マーケティングの効率化に大きく貢献しています。
長所3. コミュニティ・エコシステム
Tableauの強力なデータコミュニティは、単なるユーザーグループ以上の実用的な価値を提供します。このコミュニティは、Tableauユーザーの専門性の向上と実践的な問題解決に大きく貢献しています。
コスト削減と効率的な問題解決
Tableauフォーラムでは、外部コンサルティングを必要とせずに、データ分析の問題を解決することができます。
たとえば、複雑なデータモデリングや特定の業界に特化したダッシュボードの構築など、専門家からのアドバイスを無料で得ることができます。
これは、コンサルティングコストを節約することができることを意味します。また、フォーラムでの迅速な問題解決により、プロジェクトの遅延を回避し、時間とリソースを節約することができます。
データの革新的な活用を支援
Tableau Publicの実例を活用することで、最新のデータ視覚化手法を学ぶことができます。
これにより、トレーニングコストをかけずに従業員のスキルを向上させることができます。
さまざまな業界の革新的なデータ活用事例にアクセスすることで、企業は新しい方法でデータを分析し、活用するためのアイデアを得ることができます。
短所1. しかし...高すぎる...!
Tableauの最大の欠点の1つは、比較的高い価格です。
Tableauの競合製品であるMicrosoftのPower BIと比較すると、その差は顕著です。
Tableau vs Power BIの価格比較表
製品 | ライセンスのタイプ | 月額価格(ユーザーあたり) | 年間価格(ユーザーあたり) |
---|---|---|---|
Tableau | Creator | $75 | $900 |
Explorer | $42 | $504 | |
Viewer | $15 | $180 | |
Power BI | Premium | $20 | $240 |
Pro | $10 | $120 |
このような高額な価格のせいか、Tableauはすでに市場シェアではPower BIに1位の座を譲ってしまいました。
しかし、だからといってPower BIがグローバルのBIツールで1位とは言えません。
例えば、サムスン電子のギャラクシー(Galaxy)がグローバルスマートフォン市場で1位を取ったからといって、iPhoneを抜いて本当に1位のブランドとは言えないように。
サムスンが普及型モデルであるGalaxy Aシリーズで市場シェアを取ったのと似ていると言えます。
今でも世の中ではBIツールといえば、Tableauを先に思い浮かべます。
しかし、そのギャップはどんどん縮まっています。
短所2. 限定的なETL機能
Tableau環境では、複雑なデータの前処理を行うことは困難です。
Tableau Prepは、ノーコードの環境で基本的なデータ変換やクエリの構築を可能にします。これは、簡単なデータクレンジングや変換作業に役立ちます。
ただし、SQLでは、次のような複雑なウィンドウ関数をTableau Prepで直接実装するのが難しい場合があります。
SELECT *,
AVG(sales) OVER (PARTITION BY category ORDER BY date ROWS BETWEEN 3 PRECEDING AND 3 FOLLOWING) as moving_avg
FROM sales_data
高度なレベルのETLタスクを実行するには、多くの場合、Tableauアーキテクチャの外部で処理する必要があります。
これには追加のツールとスキルが必要となり、データ・パイプライン全体のコストと複雑さが増します。
多くの場合、Tableauを使用する組織は、別のETLソリューションを導入するか、データエンジニアリングチームのサポートを受ける必要があります。
これにより、全体的なデータ分析プロセスの効率が低下し、リソースの追加投資が必要になります。
短所3. 急な学習曲線(Learning Curve)
Tableauは強力なデータ視覚化ツールとして広く知られていますが、他のBIツールに比較して学習曲線が急です。
初めてTableauを開くと、ユーザーは真っ白なワークシートと向き合うことになります。データ視覚化の専門家でないユーザーがこのツールに慣れるのは非常に難しいです。
デザイナーでない人にFigmaを渡してアウトプットを作れと言われたときのような感覚です。
自由度の高さはTableauの大きな長所ですが、その長所を最大限に活用するには、データ視覚化に関するより多くの経験とスキル、そしてある程度のデザインセンスが必要になります。
Figmaを使いこなす必要があり、LOD式のようなTableau独自の計算式文法にも慣れる必要があります。また、Tableauの自由度が非常に高いため、すべての方法が開発者向けドキュメントに記載されているわけではありません。
そのため、開発者が Stack Overflowを使用するように、Tableauコミュニティに質問しながら作業することも少なくありません。
そのため、Power BIやLooker Studioでは有名なセレブはいませんが、Tableauのエコシステムには、視覚化に精通したセレブがたくさんいます。
Tableau YouTube
Power BI : BI系のサムスンギャラクシー
長所1. Excelとの強力な互換性
Power BIの主な強みの一つは、Microsoft Excelとの優れた互換性です。
多くの企業では、マーケティング、営業、人事など各部門の実務者は、ローカルコンピュータのExcelファイルでデータを管理しています。
Power BIは、ローカルに保存されたExcelファイルを自動的に収集してダッシュボードに反映させることができます。
実務者はいつものようにExcelで作業を行い、Power BIはこのデータを自動的に取り込み、リアルタイムでダッシュボードに反映します。
このプロセスでは、Power BIは強力なETL(抽出、変換、ロード)機能を提供します。Power Queryを使用すると、データのクレンジング、変換、結合などの作業を視覚的なインターフェースで簡単に行うことができます。
また、DAX(Data Analysis Expressions)を使用すると、高度な計算やビジネスロジックを適用することができます。
売上データから前年比の成長率を自動的に計算したり、顧客セグメントごとの収益性を分析するなど、複雑な作業を行うことができます。
さらに、Power BIは単にExcelデータを視覚化するだけでなく、複数のデータセットを統合して複雑なデータモデルを構築することもできます。
例えば、営業部門の売上データ、マーケティング部門のキャンペーンデータ、財務部門のコストデータを1つのデータモデルに統合し、総合的なビジネスパフォーマンス分析を行うことができます。
Power BIとExcelの連携の最大のメリットは、データベースクエリの作成やサーバー管理などの技術的な作業について学ぶ必要がなく、慣れ親しんだExcel環境で作業するだけで高度なデータ分析と視覚化のメリットを享受できることです。
これにより、データ活用の民主化が促進され、組織全体のデータドリブン型の意思決定能力が大幅に向上します。
長所2. 比較的低コスト
ビジネス・インテリジェンスとデータ視覚化ツールの市場では、MicrosoftのPower BIとSalesforceのTableauが最も注目されているソリューションです。
どちらのツールも強力な機能を提供していますが、価格設定に大きな違いがあります。
まず、TableauとPower BIのライセンスタイプ別の価格を表にまとめました。
製品 | ライセンスのタイプ | 月額価格(ユーザーあたり) | 年間価格(ユーザーあたり) |
---|---|---|---|
Tableau | Creator | $75 | $900 |
Explorer | $42 | $504 | |
Viewer | $15 | $180 | |
Power BI | Premium | $20 | $240 |
Pro | $10 | $120 |
この価格体系だけでも、Power BIの方が全体的に経済的なオプションであることがわかります。
Tableauの最も安価なViewerライセンスでさえ、Power BIのProライセンスよりも高価です。
実際の企業環境でのコスト比較
実際の企業環境でこのような価格差がどのように体感されるのか、より具体的に知るために、架空の中堅企業の例で比較してみましょう。
例えば、ある企業の従業員が200人であれば、価格プランに応じてユーザータイプを以下のように分けることができます。
Tableau vs PowerBI コスト比較表
ユーザータイプ | 人数 | Tableauライセンス | Tableauコスト/年 | Power BIライセンス | Power BIコスト/年 |
---|---|---|---|---|---|
データアナリストとBI開発者 | 10人 | Creator ($900) | $9,000 | Premium ($240) | $2,400 |
部門長と中間管理者 | 40人 | Explorer ($504) | $20,160 | Pro ($120) | $4,800 |
一般社員 | 150人 | Viewer ($180) | $27,000 | Pro ($120) | $18,000 |
コスト合計 | $56,160 | $25,200 |
年間のコスト合計の観点から、Power BIを選択した場合、Tableauと比較して$30,960の節約が可能です。
コスト効率の面では、Power BIはTableauと比較して約55%安いことがわかりました。
大企業で導入した場合、コスト効率の差はさらに大きくなります。
短所1.データ視覚化の自由度が低い
Tableauほど圧倒的なデータ視覚化機能はありませんが、それなりに使いやすいデータ視覚化機能を備えています。
しかし、無料のBIツールである Looker Studio (旧Google Data Studio)やオープンソースの Supersetよりも格段に優れたレベルの視覚化はできません。
Tableau と Power BI を比較するその他の記事
Looker Studio: 無料のBIツール
Looker Studio (以前のGoogle Data Studio)は、Googleが提供するクラウドベースのビジネスインテリジェンス(BI)およびデータ視覚化のプラットフォームです。
以前は Google Data Studioでしたが、Looker Studioにリブランディングされました。
実際、Looker Studioが多く使われる理由は、Google BigQueryのおかげです。
スタートアップ業界ではDW/DMとしてBigQueryを多く採用していますが、使いやすさが良いためです。
AWSの Redshift + Athena よりもはるかに使いやすいです。
Redshiftはクラスターの管理とスケーリングに多くの手作業が必要ですが、BigQueryはサーバーレスアーキテクチャーでこの複雑さを大幅に軽減します。
データの読み込みやクエリの実行速度に関しても、BigQueryが概ね優れたパフォーマンスを示し、特に大規模なデータ処理においては、より効率的です。
そのため、BigQueryとの連動が非常に良い Looker Studioを使うスタートアップが増えています。
長所1. 無料!
Looker Studioの最も注目すべき特徴は無料で提供される点です。無料なので、多くの企業が導入して使っています。
Google Analyticsは Amplitude や Mixpanel よりもどうしても機能が不足している Product Analytics のツールですが、多くの企業が使ってるのと同じですね。
しかし、無料であるにもかかわらず、Looker Studioはかなり優秀なパフォーマンスを示しています。
他のBIツールがユーザー数に応じて料金を請求するのとは異なり、Looker Studioはユーザー数に制限なく無料で利用することができます。
また、作成できるレポートやダッシュボードの数にも制限がないため、様々な部署やプロジェクトごとに必要な数のダッシュボードを作成することができます。
長所2. 強力なGoogleエコシステムとの強力な統合
Looker Studioの最大のメリットの1つは、Googleの様々なサービスとシームレスに統合されるという点です。これは、Googleエコシステムを主に使用する企業に特に強力な利点を提供します。
Google Analytics 4 (GA4)との統合は、Looker Studioの核心的なメリットです。
他のBIツールでは、GA4のデータを視覚化するために「GA4→BigQuery→BIダッシュボード」のような複雑なデータパイプラインを構築する必要があるのに対し、Looker Studioでは、このような中間段階なしでGA4のデータを直接インポートして視覚化することができます。
さらに、Looker Studioは、Google Ads、YouTube Analytics、Google Search Consoleなどの他のGoogleマーケティングツールともシームレスに連携します。
これにより、様々なチャンネルのデータを一か所で統合的に分析することができます。
例えば、
- Google AdsのキャンペーンのパフォーマンスとGA4のWebサイトの行動データを組み合わせることでROAS (Return on Ads-spent)を測定することができます。
- YouTubeチャンネルのパフォーマンス指標とWebサイトのトラフィックデータを連携することで、コンテンツマーケティングの効果を総合的に分析することができます。
- Search ConsoleのデータとGA4のコンバージョンデータを統合することで、SEO戦略の実質的なビジネスインパクトを評価することができます。
このような統合能力は、マーケティング・パフォーマンスの測定、顧客行動分析、全体的なデジタル戦略の最適化などに必要な総合的なインサイトを提供します。
Looker Studioを使用することで、企業はデータのサイロを取り除き、Googleエコシステム内のすべてのデータを効果的に活用することができます。
長所3. 習得が容易!
直感的なインターフェイスにより、特別なトレーニング費用なしでチームメンバーがすばやく適応することができ、学習コストも削減することができます。
この部分は確かにTableauと比較した場合のメリットです。
BIダッシュボード、それって簡単に作ればいいんじゃないの? という質問に...。
→ Tableau は全然違うんですけど...? と答えることができますし、→ Looker Studio はそうですよね? と答えることもできます。
ドラッグ&ドロップ機能により、複雑なコーディングをしなくても、データフィールドをチャートやグラフに簡単にマッピングすることができます。これにより、エンジニアではないユーザーでもデータ視覚化をすばやく作成することができます。
また、Googleアカウントがあれば、インストールやセットアップのプロセスなしですぐに使用できるため、IT部門のサポートがなくても、誰でも簡単に始めることができます。
短所1. 限定的な視覚化と分析機能
Looker Studioは、高度な視覚化機能には限界があります。
そのため、基本的なレポート作成や簡単なデータ視覚化には非常に適していますが、カスタムな視覚化を希望するデータ視覚化の専門家には適さないツールです。
最も顕著な制限は、提供されるグラフタイプの多様性の欠如です。Looker Studioは棒グラフ、折れ線グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、テーブルなどの基本的なグラフタイプには対応していますが、より複雑で特殊なグラフタイプには制限があります。
例えば、複雑なネットワーク図、高度な地理的視覚化、または特殊な目的のグラフを直接実装するのは難しい場合があります。
既存の定義されたテンプレート以外に、まったく新しいタイプの視覚化を作成することはできません。
グラフのカスタマイズオプションもやや限定的です。基本的な色の変更、フォントの調整、簡単なレイアウトの変更などは可能ですが、グラフの詳細なデザイン要素を完全にコントロールすることは困難です。
そのため、企業のブランドアイデンティティを完全に反映したり、非常に特殊な視覚化要件を満たすことが難しい場合があります。
また、インタラクティブ機能も不足しています。基本的なフィルタリングやドリルダウンは可能ですが、複雑なユーザーインタラクションや動的なデータナビゲーション機能を実装することは困難です。
例えば、グラフ間の複雑な連動やユーザー入力によるリアルタイムのチャートバリエーションなどの高度な機能は制限されています。
短所2. 限られたデータソース接続
Looker Studioのもう1つの大きな欠点は、接続できるデータソースが非常に制限されていることです。
- Googleエコシステム中心: Googleサービスとの連携は優れていますが、他の主要なデータソースとの接続は限られています。
- 直接のデータベース接続が無い: MySQL、PostgreSQLなどの主要なリレーショナルデータベースへの直接接続がサポートされていません。
- 限定的な外部データソースのサポート: 多くの企業が使用するERP、CRMなどのシステムとの直接連携が困難です。
- リアルタイムデータストリーミングの制限: リアルタイムデータソースとの連携とストリーミングデータの処理能力が制限されています。
このようなデータソース接続の制限があるため、多様なデータ環境を持つ企業や、Googleエコシステム外のデータを主に使用する組織では、Looker Studioは適していない可能性があります。
この2つの主な欠点により、Looker Studioは、主にGoogleサービスを使用し、基本的なデータの視覚化やレポート機能のみを必要とする小規模な組織やプロジェクトに適しています。
一方、複雑なデータ分析要件がある場合や、様々なデータソースを統合する必要がある大規模な企業やデータ中心の組織の場合には制限のある可能性があります。
短所3. クラウドのみでオンプレミスのサーバーにはインストール不可
Looker Studioの主な特徴の1つは、クラウド専用サービスであることです。オンプレミスサーバーにインストールするオプションがないため、常にインターネット接続が必要であり、ローカル環境での独立した運用はできません。
大企業や特定の業界では、このようなクラウド専用という特性が大きな制約となる可能性があります。
例えば、すでに独自のサーバーインフラを構築している大企業の場合、さらにクラウドサービスに追加投資することに消極的な場合があります。
これらの企業は、既存のインフラを最大限に活用し、新たなクラウドサービスを導入することによる追加コストや複雑さを避けたいと考えています。
特に、金融や一部の製造業の場合、ネットワーク分離ポリシーにより、クラウドサービスの利用が非常に制限されています。
これらの企業は、セキュリティ上の理由から内部ネットワークと外部ネットワークを物理的に分離して運用する場合が多いため、クラウドベースのLooker Studioは、このようなセキュリティポリシーと競合し、検討対象から除外される場合が多いです。
また、データ主権とコンプライアンスの問題も重要な考慮事項です。一部の国や業界では、データの国外移転を厳しく制限しており、クラウドサービスの使用が法的に問題になる場合があります。
SPOTFIRE: リアルタイムモニタリングに最適なBI
TIBCO Spotfireは、強力なビジネスインテリジェンス(BI)およびデータ視覚化のツールです。
Spotfireは、複雑なデータを直感的かつインタラクティブな方法で探索・分析することができ、特にリアルタイム分析と地理空間分析の能力に優れています。
長所1. リアルタイム分析
Spotfireはそのソリューションの最大のメリットとして、リアルタイム分析を前面に打ち出しています。
SpotfireのダッシュボードはSub-miliseconds(1/1000秒以下)のレイテンシ(latency)を保証するそうです。
このようなリアルタイム分析能力は、以下のような産業分野でうまく活用することができます。
- 製造業: 生産ラインのリアルタイムモニタリング
- 金融: リアルタイム取引分析とリスク管理
- 物流: リアルタイムの配送追跡と最適化
- エネルギー: 電力グリッドのリアルタイムモニタリング
- 交通: リアルタイムの交通フロー分析
Q. 他のBIではこれができませんか?
BIシステムは通常、データウェアハウスなど複数のソースからデータを取り込み、データマートで分析可能な形式に構造化した後、視覚化します。このプロセスは主にバッチ処理で行われるため、リアルタイムのデータフローをサポートすることは困難です。
このため、Tableau、Power BI、Looker Studioなどの主要なBIツールは、真の意味でのリアルタイムデータストリーミングをサポートしていません。代わりに「ニアリアルタイム(Near Real-time)」更新を提供していますが、これは依然としてバッチ処理の一形態です。
したがって、Spotfireのリアルタイムデータ処理能力は、このツールならではの差別化されたメリットと言えます。
長所2. 地理空間分析(Geo-Analytics)
Spotfireのもう一つの強みは、優れたGeo-Analytics (地理空間分析)機能です。
Spotfireは様々なタイプの地図に基づいてデータを視覚化することができ、様々な地理的視覚化オプションを提供します。
特に、距離計算、エリア分析、経路最適化など、様々な空間分析ツールを内蔵しており、位置ベースの複雑な分析を簡単に行うことができます。
大容量の地理データの処理能力はSpotfireのもう一つの強みです。
数百万の地理的データポイントをすばやく処理して視覚化することができ、大規模なIoTセンサーデータや全国単位の顧客データ分析に役立ちます。ユーザー定義の地図レイヤー機能により、企業に特化した地理情報を表現することもできます。
このような地理空間分析機能は、以下のような分野で活用することができます。
- 小売業: 商圏分析、店舗位置の最適化
- 不動産業: 地域別の不動産価値分析
- 通信業: ネットワークカバレッジ分析
- 公共部門: 都市計画、災害管理
- 環境分野: 気候変動影響分析
短所1. 価格が高い?
Spotfireの公式ウェブサイトでは、標準的な価格モデルを提示していませんが、少し調べると以下のような情報を見つけることができます。
一目でわかるように、Tableau、Power BIと比較すると以下のようになります。
ライセンスレベル | Spotfire | Tableau | Power BI |
---|---|---|---|
最上位 | $1,250 (Cloud - Analyst) | $900 (Creator) | $240 (Premium) |
中級 | $650 (Cloud - Business Author) | $504 (Explorer) | - |
基本 | $250 (Cloud - Consumer) | $180 (Viewer) | $120 (Pro) |
価格比較表を見ると、Spotfireが全体的に最も高い価格帯を形成していることがわかります。
Spotfireの最上位オプションである Cloud - Analyst は年間$1,250で、Tableauの最上位オプションである Creator ($900) よりも39%高くなっています。
Power BIの最上位オプションである Premium ($240)と比較すると、なんと421%も高くなります。
Spotfireは、リアルタイム分析と強力な地理空間分析機能に優れており、このような高度な機能が必要な場合、Spotfireに代わるソリューションを見つけるのは困難です。
一方、このような専門的な機能がどうしても必要でない場合は、高い価格を考慮すると、Spotfireの導入は最適な選択ではないかもしれません。
HEARTCOUNT: ダッシュボード + インタラクティブなデータ分析
HEARTCOUNTは従来の静的なBIソリューションではなく、ダッシュボードとデータ分析を組み合わせた統合ソリューションです。
データダッシュボードを構築しておいても、組織のメンバーは数回見るだけで、結局ダッシュボードは放置されてしまいます。
その理由は、ダッシュボードがFAQ、よくある質問であるためです。
Tableauをデータ視覚化の専門家が愛用しているのに対し、HEARTCOUNTはその逆のコンセプトで、社内のメンバー全員でデータが民主化されるように設計されています。
大企業、金融機関、公共機関、大学など、大規模な組織でメンバーのデータ民主化プロジェクトを進める際、HEARTCOUNTをコアソリューションとして多く採用しています。
長所1. 統合された分析環境
前述したように、ダッシュボードはFAQ、よくある質問であるためです。
毎回見ていたものしか見ないダッシュボードであるため、もはや新しいものがなく放置されるのです。
だからといって、視覚化の専門家が内部に常駐しながらダッシュボードを作り続けると、結局、組織はダッシュボードの金持ちになり、より多くのダッシュボードが整理されないまま放置されます。
この問題を解決するために、HEARTCOUNTはBIダッシュボードとデータ分析ツールを統合したソリューションを作りました。
ユーザーは、ダッシュボードで発見したトレンドに対して、すぐに詳細な統計分析を実行することができます。
従来のBIツールとアドホック分析ツールとをデータセットを中心に統合することで、ユーザーのデータ活用体験をさらに向上させることができます。
このような統合により、ダッシュボードベースのモニタリングから詳細なデータ探索まで、データ分析の全プロセスを1つのプラットフォームでシームレスに実行することができます。
長所2. 自然言語データ分析
自然言語によるデータ分析って、ChatGPTがやることじゃないの? という疑問に答えるために..
データ分析の各段階において、LLMはエラーを発生させる可能性が存在します。そして、ユーザーが指摘するまでは、自分がエラーを作ったという事実すら認識できないのが現状です。 (=ハルシネーション)
データサイエンス用語の中に、Error Propagation (誤差の伝播)という用語があります。あるステップ i で発生したエラー(error_i)は次のステップ i+1 に伝達され、i+1 での計算はすでに前のステップで発生したエラーを含む計算となり、結果としてエラーを再生成します。
このステップが繰り返されることで、最終的にはエラーが積み重なり、最終的な結果が信頼できなくなるという考え方です。
まるで「静寂の中の叫び」のようなゲームをしていると、最初の提示語がステップごとにずれてしまい、結果的には全く間違った答えを出してしまうようなものです。
出典
HEARTCOUNTは、このような問題、つまり市場の期待と実際のLLMが提供できる成果物とのギャップを埋めるために、AIデータ分析(AI Analytics)機能である HERATCOUNT Dialogueを提供します。
LLMの力を借りずに、独自の自然言語分析モデル(ALM, Analytical Language Model)を活用します。
質の高いデータ分析レポートを参照し、現在の選択肢に対する最適な分析的解釈、注目すべき事実を識別して導出するモデルです。
ユーザーが選択した質問に対して適切な視覚化の結果と解釈を導き出し、ユーザーに提供します。結果の導出は、既存のHEARTCOUNTが保有しているすでに明確に定義された視覚化/分析エンジンを活用し、エラーは発生しません。
→ LLMのトランスフォーマー・アーキテクチャーが根本的に抱えているハルシネーション(hallucination)現象が発生する可能性はありません。
出典
長所3. 異常値検出と原因の自動報告機能
HEARTCOUNTの「シグナル(Signal)」機能は、データから重要な変化を自動的に検出し、その原因を分析する革新的なツールです。
この機能は、単純な統計的な異常値検出を超え、ビジネスコンテキストで実際に意味のある変化を識別します。
「Signal」は、偶然の変動(Noise)と実質的な変化(Signal)とを明確に区別します。複雑な予測モデルや統計理論に頼ることなく、実務者の視点と言語で重要な変化を定義して検出することができます。
例えば、「3ヶ月以上連続して増加した後、今月50%以上減少したケースを探して」などの具体的なパターンを簡単に検索することができます。
変化が検出されると、「Signal」はその変化に影響を与えた様々な要因を自動的に分析します。
この過程で、無数の影響要因をその重要度(絶対的な変化量、変動率など)に応じて並び替えして検索可能にします。これにより、ユーザーは最も重要な影響要因をすばやく把握することができます。
さらに、「Signal」は、これらの分析結果に基づいて、注目すべき指標の変化とその主な要因をメールレポート形式で整理して自動的に送信します。
この機能により、チーム全体で重要なデータ・インサイトを迅速に共有して対応することができます。
短所1. クリエイティブな視覚化が難しい
以前のLooker Studioの欠点と同じです。
HEARTCOUNTもカスタム(Custom)な視覚化をサポートしていないため、まったく新しいタイプの視覚化を作り出すのは困難です。
そのため、視覚化の専門家が非常にクリエイティブな視覚化ダッシュボードを作成するのに適したBIツールではありません。
HEARTCOUNTは最初から高度な視覚化専門家のためのツールではなく、すべての人が使いやすいデータ分析ツールを目指しています。HEARTCOUNTのキャッチフレーズが「Everyone is an Analyst」であることから分かります。
短所2. ダッシュボードは企業向けのみ提供
HEARTCOUNT は2つのタイプに製品を分類することができます。
ここで、HEARTCOUNT ABIとは、これまで言及したBIとデータ分析ツールが合体した製品を指します。
なお、このHEARTCOUNT ABIは企業向けにのみ配布されており、現時点では個人が使用することはできません。
まとめ
BIツール | 主な長所 | 主な短所 |
---|---|---|
Tableau | - 強力なデータ視覚化機能 - Salesforceとのシナジー - 活発なコミュニティ | - 高い価格 - 限られたETL機能 - 急な学習曲線 |
Power BI | - Excelとの互換性 - 低コスト - 準拠した視覚化機能 | - 限られた視覚化の自由度 |
Looker Studio | - 無料で利用 - Googleエコシステムとの統合 - 簡単な学習 | - 限定的な視覚化/分析機能 - 限られたデータソース接続 - クラウド専用 |
Spotfire | - リアルタイム分析能力 - 優れた地理空間分析 | - 高い価格帯 |
HEARTCOUNT | - 統合分析ソリューション - 自然言語データ分析 - 異常値検出と自動レポート | - 限られたウィンドウの視覚化 - 企業向けダッシュボードのみ |