製造業のマーケティングチームを悩ませるダイナミック・プライシング
ところで、「ダイナミック・プライシング」って一体何?
ダイナミック・プライシングとは、企業が消費者の需要と供給の状況に応じて、商品やサービスの価格をリアルタイムで調整する価格戦略のことを指します。あらかじめ価格を固定するのではなく、変化する市場状況に柔軟に対応するのが特徴です。
代表的な例としては、大手ECプラットフォームである「クーパン(Coupang)」が挙げられます。
クーパンは常に他社の販売価格をモニタリングし、最安値を維持する戦略を取っています。
この仕組みによって、顧客は「いつでも最安値で買える」という安心感を得られ、クーパン側も効果的に顧客を獲得することができます。
その意味では、非常に優れた価格戦略だと言えるでしょう。
しかし、製造業側の立場から見ると、クーパンの価格変動に伴って発生する利益減少分をメーカーが負担せざるを得ないケースも多くあります。
この損失を最小限に抑えるために、数多くのセラーの販売価格をリアルタイムで監視・管理し、「ブラックセラー(不正業者)」を特定・排除する業務が重要になってきています。
価格の変動を見逃せば見逃すほど、損失は拡大します。
そのため、リアルタイム性と業務の効率性をいかに確保するかが、製造業マーケティングチームの大きな課題となっているのです。
ECサイトにおける販売価格モニタリングの現実的な課題
しかし現実には、数多くのオンラインセラーの価格情報を収集するのは非常に困難です。
セラーの数は数万件にものぼり、同じ商品でも容量やセット数の違いによって価格が異なるうえ、商品名の表記もバラバラだからです。
有効な比較を行うためには、複雑なデータの前処理やマッチングアルゴリズムが不可欠であり、
こうした膨大なデータを手作業で、かつ正確かつ迅速に把握するのは、実質的に不可能に近いと言えます。
こうした背景のもと、HEARTCOUNTとIR KOREAの協業が始まりました。
私たちは、必要な情報を一目で把握できるダイナミック・プライシング・ダッシュボードと、
そのデータをもとにEC市場を分析できるオンラインマーケット・インテリジェンス・ソリューションを、共同で開発することになったのです。
HEARTCOUNT ABI × IR KOREA 共同プロジェクト
データ分析をもとにコンサルティングを提供しているIR KOREAは、市場のニーズにより効率的に応える方法を模索していました。関連するデータは十分に保有していたものの、従来のダッシュボードでは大量データの処理に時間がかかり、プロダクトとしてのデザイン完成度も不十分だったため、Excelを使って運用を続けていたのです。
より高速かつ柔軟に市場データを分析できるソリューションを求め、IR KOREAは複数のBIツールを自ら比較・検討しました。T社をはじめとしたさまざまな選択肢を評価する中で出会ったのが、HEARTCOUNTでした。
他のツールと比較して、カスタマイズの柔軟性、専門家によるサポート体制、視覚的な完成度の点で高い評価を獲得。こうして、IR KOREAとHEARTCOUNTは企画段階から密に連携し、実際に製品として提供可能なデータ分析・ダッシュボードソリューションの共同開発に着手したのです。
ダイナミック・プライシング & オンラインマーケット・インテリジェンス(ECデータ)ダッシュボード
こうして誕生したプラットフォームは、大きく分けて「モニタリング」と「市場・成果分析」という2つのコア機能で構成されています。
HEARTCOUNTとIR KOREAの協業によって生まれたこのプラットフォームは、
単なる価格情報の収集にとどまらず、オンラインマーケット・インテリジェンスのための高度なデータ分析ソリューションへと進化を遂げつつあります。
ダイナミック・プライシング ダッシュボード:主要商品の価格モニタリング

- 自社価格モニタリング(ダイナミック・プライシング)
- 競合価格モニタリング(ダイナミック・プライシング)
ダイナミック・プライシング・ダッシュボードは、1日あたり3〜12回収集されるデータをもとに、商品の価格変動の推移を可視化して表示します。
自社価格と競合価格をリアルタイムでモニタリングできるほか、
特に非認定販売業者(ブラックセラー)による価格設定も管理できるよう設計されています。
オンラインマーケット・インテリジェンス(ECデータ)ダッシュボード:市場分析/成果分析

- 市場分析
市場分析ダッシュボードでは、オンラインマーケットにおける販売数量および売上金額データを、IR KOREA独自の指標計算ロジックに基づいて分析し、ダッシュボード形式で提供します。(例:現在、売上は11番街が最も高く、販売数量はGmarketが最多 など)

- 成果分析
複数ECプラットフォームを横断するパフォーマンスの可視化、成果分析ダッシュボードでは、10以上のECプラットフォームから収集されたデータをもとに、全体売上に対する特定ブランドの売上比率など、定量的な成果指標を分析・提供します。
特に、IR KOREAが定義した5つの主要指標(販売数量、SKU数、棚シェア(Shelf Share)、ユニットシェア(Unit Share)、バリューシェア(Value Share))を組み合わせることで、販売効率性、プレミアムポジショニング、シェア対比の実績まで精緻に把握することが可能です。
これらの指標は単なる数値ではなく、「どの製品に注力すべきか」「どこで機会損失が発生しているか」といった戦略的インサイトに直結します。
「本当の最安値比較」を可能にした、データ標準化アルゴリズム
EC価格情報を正確に比較・分析するには、データの収集だけでは不十分です。
同一商品でも容量、バンドル数量、販売形態、配送条件などが異なるため、見かけの価格だけでは実質的な最安値を判断することはできません。
そのため、データ収集後には以下のような構造化処理が不可欠です:
商品名の標準化、
- 容量・本体数・販売セット数の数値化
- チャネル・セラーごとの配送条件や価格への反映
IR KOREAは、これらのデータを標準化・数値化するルールを企画・設計し、
HEARTCOUNTはその要件をもとに、複雑な条件を正確に反映したデータを視覚的に一目で把握できるダッシュボードを構築しました。
ECデータを一画面に:HEARTCOUNTのデータ視覚化ダッシュボード
IR KOREAの高度なデータ要件に応えるため、HEARTCOUNTはETLロジックの設計からデータマートの構築までを担い、
新たなデータが自動で取り込まれ即時にダッシュボードに反映される仕組みを構築しました。
オンラインマーケットの価格とパフォーマンスの流れを統合的に表現できる構成とし、複雑な分析クエスチョンとインサイトを1つのダッシュボードでカバーしています。
さらに必要に応じてCSSカスタマイズも行い、従来のBIツールでは表現が難しかった視覚的な完成度も実現しました。
圧倒的な利便性を実現した、HEARTCOUNT × IR KOREAの協業
- 複雑なデータ統合・マート構築と、自動化されたデータフロー
- ECデータ分析の流れを一画面で直感的に可視化
これにより、クライアント企業は毎朝ダッシュボードを開くだけで市場の変動や競合状況を即座に把握できるようになりました。
HEARTCOUNTとIR KOREAの「ECデータ・インテリジェンス」
この革新的なプラットフォームは現在、複数の流通・消費財ブランドでコンサルティングツールとして活用・導入提案されています。
ダッシュボードには必要な分析クエスチョンとロジックがあらかじめ組み込まれているため、日々のレポート作成にかかる時間や人的リソースの大幅削減にもつながっています。
HEARTCOUNTは、各企業のビジネス特性に最適化されたカスタムダッシュボードを提供し、リアルタイムな市場変化にも柔軟に対応できる体制を支援しています。
最初のプロジェクトは大規模かつ複雑で、一筋縄ではいきませんでしたが、
最終的には「毎日使いたくなるほど便利」なダッシュボードとして結実しました。
- 自社価格とブラックセラーの管理
- 競合価格と市場シェアのモニタリング
- ECデータ分析に基づいた戦略策定
IR KOREAの深い市場インサイト × HEARTCOUNTの強力な分析基盤によって、御社の持つデータの可能性を最大限に引き出しませんか?